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2017/04/24

太陽電池の集電効率改善や屋根材一体型の開発が進む

投信1 4/21(金) 21:20配信

投信1編集部によるこの記事の注目点
  ・ PV EXPO 2017では、結晶シリコン太陽電池(結晶SiPV)の集電極であるバスバーに関する提案が目立ちました。
  ・ セル表面に形成されるバスバーは太陽光の入射ロス(シャドウロス)の原因になりますが、バスバー上(インターコネクター)で反射した光を再利用すると発電量アップが期待できます。
  ・ 住宅向けPVの用途開発として屋根材一体型の提案が増えているのは、屋根材一体型は景観に優れ、設置が容易、屋根への重量負担が少ない等の利点があるためです。
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前回に続き、3月1〜3日に東京ビッグサイトで開催された「PV EXPO 2017」(主催=リード エグジビション ジャパン)のレビューを紹介する。

今回の展示会では、結晶シリコン太陽電池(結晶SiPV)の集電極であるバスバーに関する提案が多かった。高性能電極ペースト、白色EVAや裏面ガラス反射構造などの光閉じ込め技術、発電と景観を両立した屋根材一体型モジュールの提案も相次いだ。

結晶SiPVの表面に形成するバスバーは、従来は2本だったが、集電効率を改善するためマルチ化が進んでおり、最近では4〜5本が主流になっている。

パナソニックの「HIT」は3本バスバーだが、トリナ・ソーラー、ハンファQセルズ、JAソーラー、LONGi、ハレオン・ソーラー、LGエレクトロニクス、サンテック、RISENは4本バスバー、ソーラーワールド、カナディアン・ソーラー、HT-SAAE、RECソーラー、ジンコ・ソーラー、インリー・グリーンは5本バスバーを採用している。

また、LGや長州産業、HT-SAAEでは、十数本の細いワイヤー状の電極を用いたマルチワイヤー電極を提案している。

セル表面に形成されるバスバーは太陽光の入射ロス(シャドウロス)の原因になるが、バスバー上(インターコネクター)で反射した光を再利用すると、発電量アップが期待できる。パナソニックはHITのバスバーに拡散タブを採用している。タブ上の入射光を反射・再吸収することで発電量が増えるという。

中国勢も同様の技術を導入している。ジンコはLCR(Light Capture Ribbon)の採用でモジュール出力が4〜5W増加すると説明。インリー、サンテックもインターコネクター反射機能を提案している。

電極ペーストでは、独ヘレウス、米デュポンが新製品を紹介した。ヘレウスは2008年からPV電極ペースト事業に参入しており、20〜25μmのグリッド電極幅を実現する技術の開発に取り組んでいる。低温プロセスに対応したPERC用電極ペースト(表面&裏面)を販売しており、次世代の低温対応ペーストとして、ヘテロ接合および有機系PV向けの新規ペーストも開発した。200℃、10分で硬化し、ヘテロ接合および有機薄膜太陽電池基板での高密着強度、低抵抗を実現している。

デュポンはp型表面用銀電極ペースト「PV19x」をラインアップしているが、新製品「PV20x」を開発中。PV20xは最新の有機組成デザインにより、30μm、33μmのマスクでも線幅30μmの電極を形成できるなど、PV19を上回る細線化を実現している。

また、従来は低温プロセスに対応したPERC用電極ペースト「PV76」をラインアップしていたが、PV20xからは通常のセルとPERCセルのいずれにも対応できるようになった。PV20xは17年中の市場投入を予定している。

モジュール出力の向上を図るため、反射率の高い封止材として白色EVAが提案されている。セルに近いところで光が反射するため、効率よく光がセルに届くという。ジンコはすでに実用化しており、インリー、JAも検討している。

ソーラーワールドは両面受光型のWガラスモジュールの裏面側に、白の網目状の加工を施したガラスを使用している。裏面のガラスで透過した光を反射することで出力向上が見込めるとしている。

住宅向けPVの用途開発としては、屋根材一体型の提案が増えている。屋根材一体型は景観に優れるほか、設置が容易、屋根への重量負担が少ない、といった利点がある。

F-WAVEは富士電機の技術および生産設備を継承して14年1月に設立。アモルファスSi/アモルファスSiGeのタンデム型フレキシブル太陽電池を製造している。ETFEでラミネートして高い耐久性を実現している。標準セルは414×832mmで23Wの出力を発揮する。

新たな用途開発として、屋根材一体型を提案している。樹脂屋根材と完全一体化できるため、屋根への重量負担がないのが特徴だ。さらに、通気(集熱)機能一体型樹脂屋根材も開発しており、屋根材の下で空気を暖めて暖房や熱交換に利用できるという。

東芝も単結晶SiPVを用いた屋根建材型モジュール(出力130W)を販売しているが、さらに、単結晶SiPVを用いた瓦型モジュールを開発した。デュポン製高機能樹脂の採用で、瓦3枚分と同じ形状を実現している。特別な設置金具は不要で、通常の瓦と同じようにビス止めが可能。重量は瓦の半分以下で、屋根面と同じ高さでPVモジュールを設置できる。

ソロパワー・ジャパンは屋根置きに特化したフレキシブルCIGS太陽電池を展開している。同社のCIGSは、基板に50μm厚の金属箔を使用しており、重量は一般的なPVに対し5分の1程度と軽いのが大きな特徴だ。そのため、耐荷重の小さい工場屋根にも設置でき、設置する際に特別な器具が不要、一時保管するスペースも不要で、工事期間の短縮と設置コストの低減が期待できる。

モジュールは0.4m幅のSP1(出力70〜90W)と同1.14m幅のSP3(同200〜260W)の2種類を用意している。現在は米国で生産した製品を輸入しているが、需要が旺盛なため、日本に生産拠点を整備することにした。富山県黒部市の工業団地に用地を確保し、18年秋から生産を開始する予定。生産能力は年産10〜15MW。当初はモジュールの組立からスタートするが、将来はセル&モジュール一貫生産も視野に入れている。

電子デバイス産業新聞 記者 松永新吾

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